駅
「警察っ!」
警察手帳を駅員に見せ、都川と元木は自動改札を一蹴りで飛び越える。
「何番線?」
「6番線。あっちだ」
都川が言い終わらないうちに、元木は走り出す。
『間もなく、六番線に電車が参ります……』
列車の到着を告げるアナウンス。
リミットは近い。だが、今がリミットではない。
16ビートで激しく胸を打ち付ける心臓。五段とばしで階段を駆け上がる。ホームでは電車から降りる人と、乗り込む人が渦巻く。
「どこだ!」
元木は叫ぶ。
渦巻く人並みの中に彼の姿はない。
「元木、向こうだ!」
遅れてやってきた都川が叫ぶ。
向こう、それだけで元木は向かいの8・9番線ホームを見る。
スポーツタイプのサングラスに、身長ほどもある長い『布の袋』を持つ男。男がこちらを見ている。
二ノ宮だ。
瞬間、世界が暗転する。真っ黒い世界で、二人は対峙する。二ノ宮の口が『さ・よ・う・な・ら』と、静かに動いた。
「二ノ宮ぁー!」
再度の暗転。同時に通過する快速電車が7番線に入り9番線が視界から消える。
逃げられる。そう思った瞬間には、元木はすでに動いていた。
「RIプログラム、起動!」
瞬間、全身を貫く起動の衝撃。だが、余韻に浸る暇はない。
プラットホームを三歩の助走で飛び上がる、次の瞬間に視界に飛び込む流れる電車の屋根と電線とパンタグラフ。それを、一瞬でくぐり9番線に飛び込む。
「終わりだぁー!」
なんの前触れもなく、元木は三発の22LR弾を放つ。
悲鳴が木霊する。
「元木!」
都川が叫んだ。
続きを読む..
警察手帳を駅員に見せ、都川と元木は自動改札を一蹴りで飛び越える。
「何番線?」
「6番線。あっちだ」
都川が言い終わらないうちに、元木は走り出す。
『間もなく、六番線に電車が参ります……』
列車の到着を告げるアナウンス。
リミットは近い。だが、今がリミットではない。
16ビートで激しく胸を打ち付ける心臓。五段とばしで階段を駆け上がる。ホームでは電車から降りる人と、乗り込む人が渦巻く。
「どこだ!」
元木は叫ぶ。
渦巻く人並みの中に彼の姿はない。
「元木、向こうだ!」
遅れてやってきた都川が叫ぶ。
向こう、それだけで元木は向かいの8・9番線ホームを見る。
スポーツタイプのサングラスに、身長ほどもある長い『布の袋』を持つ男。男がこちらを見ている。
二ノ宮だ。
瞬間、世界が暗転する。真っ黒い世界で、二人は対峙する。二ノ宮の口が『さ・よ・う・な・ら』と、静かに動いた。
「二ノ宮ぁー!」
再度の暗転。同時に通過する快速電車が7番線に入り9番線が視界から消える。
逃げられる。そう思った瞬間には、元木はすでに動いていた。
「RIプログラム、起動!」
瞬間、全身を貫く起動の衝撃。だが、余韻に浸る暇はない。
プラットホームを三歩の助走で飛び上がる、次の瞬間に視界に飛び込む流れる電車の屋根と電線とパンタグラフ。それを、一瞬でくぐり9番線に飛び込む。
「終わりだぁー!」
なんの前触れもなく、元木は三発の22LR弾を放つ。
悲鳴が木霊する。
「元木!」
都川が叫んだ。
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富士原生命秘書
サンダーバード。
それが、諏訪部の銃の名だった。SW1911(ガバメント)のスライドを少しいじり、全体に装飾を施しただけの簡素なカスタム銃だが、
「銃の鑑賞? いい趣味ね」
その声に、ドキリとして慌てて諏訪部は銃を隠した。
「別に隠さなくてもいいんだけど?」
ゴスロリはそういって、ロッカーからレディースのパンツスーツを取り出し、着替えはじめる。
「入谷じゃなかったら、困るだろう?」
「ここは、私たちの専用だけど?」
「念には念を、だ」
諏訪部はそういい、銃をジャケットの下のホルスターに仕舞い扉に手をかける。
「あ、ちょっと待って」
と、入谷が声を上げる。
「社長は、今日の午後の会合でどちらか一人って言ってるけど、どうする?」
「オレは、パス。入谷、言ってくれねぇか?」
「分かった」
続きを読む..
それが、諏訪部の銃の名だった。SW1911(ガバメント)のスライドを少しいじり、全体に装飾を施しただけの簡素なカスタム銃だが、
「銃の鑑賞? いい趣味ね」
その声に、ドキリとして慌てて諏訪部は銃を隠した。
「別に隠さなくてもいいんだけど?」
ゴスロリはそういって、ロッカーからレディースのパンツスーツを取り出し、着替えはじめる。
「入谷じゃなかったら、困るだろう?」
「ここは、私たちの専用だけど?」
「念には念を、だ」
諏訪部はそういい、銃をジャケットの下のホルスターに仕舞い扉に手をかける。
「あ、ちょっと待って」
と、入谷が声を上げる。
「社長は、今日の午後の会合でどちらか一人って言ってるけど、どうする?」
「オレは、パス。入谷、言ってくれねぇか?」
「分かった」
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富士原生命相互会社秘書
新宿駅の案内板の前にたった二人の女は、恐ろしく周囲の人目を引いていた。
一方は秋葉原にでもいそうな、所謂甘ロリと呼ばれるピンクのワンピース。一方は所謂CanCamのモデルのようなお姉系の女。
どちらも異常なほどの美人というわけでもなく、どちらも何らおかしいわけではない。ただ、この二人が同時にいるというそれだけで、そこはまるで別世界のように異様だった。
「かつて、新宿駅は立地の悪さから、平日でも利用者0人の日があったそうだ」
お姉系――諏訪部愛美はそういい、タバコを取り出し火をつける。
「それは迷った理由にはならないわ」
ロリータ――入谷はそういい、諏訪部の口からタバコを奪う。
すでに、時間にして30分ロス。
給料日前と言うことで、電車代をケチり普段は使わない私鉄を使ったのが運の尽き。人混みにもまれ、気がついたら見たこともない改札に出ていた。
もっとも、同様の理由で迷子のなっていた諏訪部と合流できたのは奇跡としかいいようがない。
一方は秋葉原にでもいそうな、所謂甘ロリと呼ばれるピンクのワンピース。一方は所謂CanCamのモデルのようなお姉系の女。
どちらも異常なほどの美人というわけでもなく、どちらも何らおかしいわけではない。ただ、この二人が同時にいるというそれだけで、そこはまるで別世界のように異様だった。
「かつて、新宿駅は立地の悪さから、平日でも利用者0人の日があったそうだ」
お姉系――諏訪部愛美はそういい、タバコを取り出し火をつける。
「それは迷った理由にはならないわ」
ロリータ――入谷はそういい、諏訪部の口からタバコを奪う。
すでに、時間にして30分ロス。
給料日前と言うことで、電車代をケチり普段は使わない私鉄を使ったのが運の尽き。人混みにもまれ、気がついたら見たこともない改札に出ていた。
もっとも、同様の理由で迷子のなっていた諏訪部と合流できたのは奇跡としかいいようがない。
竜崎閣下、将ちゃんと初遭遇
竜「おじさん、竜崎ッていって、お父さんのお友達なんだけど。いま、お父さんお家にいるかな?」
将「……ちがう」
竜「ちがう?」
将「将ちゃん、よい子だから知ってるもん。リューザキさんは、パパのお友達じゃないもん」
竜「いや、えーっと、仕事仲間?」
将「リューザキさんは、出来ることなら醒めて欲しい悪夢のような現実だもん」
竜「……そんなことないよ?」
続きを読む..
将「……ちがう」
竜「ちがう?」
将「将ちゃん、よい子だから知ってるもん。リューザキさんは、パパのお友達じゃないもん」
竜「いや、えーっと、仕事仲間?」
将「リューザキさんは、出来ることなら醒めて欲しい悪夢のような現実だもん」
竜「……そんなことないよ?」
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水死体
水が至るところからしたたり落ちていた。
塗装が一部はげた、その車にはうつむくように、壮年の男が一人ハンドルに顔を埋めていた。
海から引き上げられた車は、一昨日失踪した佐伯の物に間違いなく、乗っている男もまた、佐伯に間違いなかった。
「他殺だな」
一通り、現場検証が終わると鮫島は自慢げに宣言する。
「いや、見ての通りの練炭自殺だろ?」
そういいつつ、野沢は吉田だけに見えるように合図をする。
分かってるけど、反論するよ。の合図だ。
「野沢。お前もついに焼きが回ったな」
「いや、刀じゃないから焼きは回らないけど?」
「いや、そうじゃなくてな……」
「じゃあ、どういう事なんだよ?」
「だから、焼きが回ったって言うのは……」
《中略》
「被害者の足の長さからだと、異常に座席が前すぎるだろ?」
言われてみれば、と吉田は思う。
「運転席をこんなに前にしたら、佐伯じゃ運転できない。この長さ的には女だな。そうすると、一つの結論が出る」
「どんな?」
「犯人は、少なくとも男女2人。男は無免許か、ペーパードライバ、もしくは何らかの影響で自動車が運転できない人物」
「うーん。そうだね」
すくし、考えるように野沢が頷く。
「え、何でですか?」
感心する野沢組に対し、なんかよく分からない、という顔の浅倉が野沢に訊ねる。
「運転したのが女だとしたら、女じゃ佐伯さんは運転席に入れられないだろ? 少なくとも、ここまではその女が運転してきて、佐伯さんは眠らされるか、気を失った状態で、助手席か、後部座席――まあ、後部座席に寝かされて、万が一起きた時のために男が一緒に後部、って感じか――その状態でここまで来て、佐伯さんを運転席に押し込まなきゃいけないけど、まあ、男を一人、女性が持ち上げて、ってことはないだろうから、力仕事が出来る男が一人、って感じ。もっとも、超ムキムキな女の人とか、魔法少女が運転してたら、すべての推理は無駄だけどね」
ねー、と野沢は鮫島を見る。
「魔法だけはやめてくれ……」
消えるような小声で、鮫島が言う。
「どうしたんです、鮫島さん?」
「魔法にトラウマがあるだけだよ」
野沢がよくない笑みを浮かべる。
塗装が一部はげた、その車にはうつむくように、壮年の男が一人ハンドルに顔を埋めていた。
海から引き上げられた車は、一昨日失踪した佐伯の物に間違いなく、乗っている男もまた、佐伯に間違いなかった。
「他殺だな」
一通り、現場検証が終わると鮫島は自慢げに宣言する。
「いや、見ての通りの練炭自殺だろ?」
そういいつつ、野沢は吉田だけに見えるように合図をする。
分かってるけど、反論するよ。の合図だ。
「野沢。お前もついに焼きが回ったな」
「いや、刀じゃないから焼きは回らないけど?」
「いや、そうじゃなくてな……」
「じゃあ、どういう事なんだよ?」
「だから、焼きが回ったって言うのは……」
《中略》
「被害者の足の長さからだと、異常に座席が前すぎるだろ?」
言われてみれば、と吉田は思う。
「運転席をこんなに前にしたら、佐伯じゃ運転できない。この長さ的には女だな。そうすると、一つの結論が出る」
「どんな?」
「犯人は、少なくとも男女2人。男は無免許か、ペーパードライバ、もしくは何らかの影響で自動車が運転できない人物」
「うーん。そうだね」
すくし、考えるように野沢が頷く。
「え、何でですか?」
感心する野沢組に対し、なんかよく分からない、という顔の浅倉が野沢に訊ねる。
「運転したのが女だとしたら、女じゃ佐伯さんは運転席に入れられないだろ? 少なくとも、ここまではその女が運転してきて、佐伯さんは眠らされるか、気を失った状態で、助手席か、後部座席――まあ、後部座席に寝かされて、万が一起きた時のために男が一緒に後部、って感じか――その状態でここまで来て、佐伯さんを運転席に押し込まなきゃいけないけど、まあ、男を一人、女性が持ち上げて、ってことはないだろうから、力仕事が出来る男が一人、って感じ。もっとも、超ムキムキな女の人とか、魔法少女が運転してたら、すべての推理は無駄だけどね」
ねー、と野沢は鮫島を見る。
「魔法だけはやめてくれ……」
消えるような小声で、鮫島が言う。
「どうしたんです、鮫島さん?」
「魔法にトラウマがあるだけだよ」
野沢がよくない笑みを浮かべる。


