空白
「ウィルドのルーンね」
志村がクスリと笑む。
「僕は空白のフサルク(ブランク・ルーン)って習いましたけど」
「意味は一緒ね。だから、あの子は塔だのハガルだのって名乗っていたのね」
「なるほど」
ウィルドは運命を意味する。
つまり、避けることの出来ない災厄――つまり、運命を意味する同じルーンのハガルやタロットの塔などと同系となる。
志村がクスリと笑む。
「僕は空白のフサルク(ブランク・ルーン)って習いましたけど」
「意味は一緒ね。だから、あの子は塔だのハガルだのって名乗っていたのね」
「なるほど」
ウィルドは運命を意味する。
つまり、避けることの出来ない災厄――つまり、運命を意味する同じルーンのハガルやタロットの塔などと同系となる。
シンデレラ
「そうだな。12時になったらどっちみち魔法が解ける。堂々巡りだな」
「そういえば」
と、安がいう。
「こんなところで言うのも何ですけど、結局どうしてシンデレラのガラスの靴は12時を過ぎても消えなかったんですか?」
「ああ、それは本物だったからだよ」
「本物?」
「そう、アレは魔女からのプレゼント。魔法じゃなく、本物のガラスの靴」
「本物――魔法で作られたまがい物ではなく、本物のガラスの靴。本物なら、12時を過ぎても……。――白沢さん!」
「なに?」
「本物です。本物の魔法」
「本物の、魔法?」
「そうですよ。12時を過ぎても、本物なら解けないんです」
続きを読む..
「そういえば」
と、安がいう。
「こんなところで言うのも何ですけど、結局どうしてシンデレラのガラスの靴は12時を過ぎても消えなかったんですか?」
「ああ、それは本物だったからだよ」
「本物?」
「そう、アレは魔女からのプレゼント。魔法じゃなく、本物のガラスの靴」
「本物――魔法で作られたまがい物ではなく、本物のガラスの靴。本物なら、12時を過ぎても……。――白沢さん!」
「なに?」
「本物です。本物の魔法」
「本物の、魔法?」
「そうですよ。12時を過ぎても、本物なら解けないんです」
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俐夛&盲霞
「愛鈴は……救われたのだろうか?」
「あなたは、俐夛ですか?」
俐夛はあなたでしょう、と盲霞は思ったが、真剣な話のようなので、
「いいや」
と、首を振る。
「そうです。あなたは盲霞。時に、私が盲霞のことをどれほど好きか分かりますか?」
「え……」
盲霞は言い淀む。
俐夛が一体何を目指しているのかは、全くもって不明だがここは男として何か言わなければいけない空気なのだろうか。
「例え、ば?」
「〜ぐらい好きとか、世界一好きとか、実は好きじゃないとか。ですね」
「世界一、好き?」
「残念ながら外れです。私は盲霞のい――いえ、ここは置いておきましょう。ともかく、我々は、他者の感情を当てずっぽうで考えることは出来ても、真に理解することは出来ません。相手に向かってこうである、と、主張しない限り。愛鈴は、私に何も言わず死にました。だから、私が彼女を理解することは今後、絶対にあり得ません」
続きを読む..
「あなたは、俐夛ですか?」
俐夛はあなたでしょう、と盲霞は思ったが、真剣な話のようなので、
「いいや」
と、首を振る。
「そうです。あなたは盲霞。時に、私が盲霞のことをどれほど好きか分かりますか?」
「え……」
盲霞は言い淀む。
俐夛が一体何を目指しているのかは、全くもって不明だがここは男として何か言わなければいけない空気なのだろうか。
「例え、ば?」
「〜ぐらい好きとか、世界一好きとか、実は好きじゃないとか。ですね」
「世界一、好き?」
「残念ながら外れです。私は盲霞のい――いえ、ここは置いておきましょう。ともかく、我々は、他者の感情を当てずっぽうで考えることは出来ても、真に理解することは出来ません。相手に向かってこうである、と、主張しない限り。愛鈴は、私に何も言わず死にました。だから、私が彼女を理解することは今後、絶対にあり得ません」
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浦島太郎
「これは?」
安が小包を開けようとする手を、麒麟は彼女の手を押さえて制する。
「ここでは開けないで」
「どうしてです?」
「お家に帰る前に開けると、煙が出てきてお爺さんになっちゃうから」
安が小包を開けようとする手を、麒麟は彼女の手を押さえて制する。
「ここでは開けないで」
「どうしてです?」
「お家に帰る前に開けると、煙が出てきてお爺さんになっちゃうから」
国立調査団物語
【前回までの「神の左目が閉じるまで」は】
死亡したと伝えられる、当代最高の魔術師とよばれた、野崎剣護の息子、野崎盾弥と接触した調査団は、彼の口から彼の死亡が「怪しい」と言う事実を告げられる。
彼は、今もなお「失踪」した父を捜していた。
そんな、真摯な姿に心打たれた恵は、盾弥と共に彼の行方を捜すが、それに対し、三沢は「失踪」という事実に懐疑的だった。
事実、彼の死体は発見されて居らず、行方不明→死亡、という構図ではあったが、その間、家族、親友の類の誰にも会いに来ていないという事実。
三沢は、悪魔の証明であると思いながらも恵とは逆に「死亡」の方向から証明を行おうとする。
しかし、そんな側面から導き出された結論は、三沢にも、そして、息子の盾弥にも信じがたいものだった……
(1〜8話までのあらすじ?)
――
「以上の考察から、僕の導き出した結論は、『この世に存在しないのは、野崎健悟ではない』」
「どういう、事です?」
盾弥が訊ねる。
答えは分かっている。だが、それを、自らの口で言うのはあまりにも恐ろしく感じる。
「三沢……」
怪訝そうに、そして不快そうに恵が彼を見つめる。
「つまり、存在しないのね。野崎“盾弥”が」
「そういうこと」
非常に軽い調子で、三沢が言う。
盾弥はふるえが止まらなかった。自分が存在しない、と言う事実。
「Wd.野崎は、国家魔術師として、当時ある組織との調停を行っていた。反政府組織、梁山泊三十六士との。現行政府に対し、国家魔術制の是非にひどく武力的に意見するこの団体への対処を彼は命じられていた。その対処は、野崎に一任され、場合によっては血祭りに上げても不問、とされる作戦。彼はそんな政府の方針とは相容れず、粘り強く交渉を続けた。だが、その日、下手を打った。その内容は、僕はつかめなかったけど、安は知ってるんだろう?」
恵は頷く。
だから、あのとき三十六の一人、木戸が来たのだ。
「そして、追われる羽目になった。生命の危機を感じた彼は、世紀の大芝居を打つことにする。自身を、0歳の赤子に戻し、記憶に蓋をした。そして、三歳の時に「父にあった」という記憶を後で……五歳頃に発現するようにした」
「世界五分前仮説か」
安がつぶやく。
世界五分前仮説とは、哲学の思想。
世界は実は五分前に出来ている。自身に五分以上前の記憶がたとえあったとしても、それは五分以上前の記憶を持った状態で、その人間は世界と共に作られたかも知れない。
「ちょっと、ニュアンスは違うけど、そういうこと」
「じゃあ、盾弥君は、何なの?」
「野崎の作った幻影だよ。彼が野崎の隠れ蓑で野崎健悟=盾弥である以上、野崎盾弥はどう足掻いても存在しないのだし、ここまで育ってきた間の記憶はゴミくず同ぜ……」
三沢は、最後まで言葉を言うことはなかった。
唇を噛みしめる、安と、頬を真っ赤に腫らしながらも、表情一つ変えることのない三沢。
「最低」
安はそう、捨て台詞を吐くと盾弥の手を引いて部屋を出て行く。
「ああ、女の子泣かせた」
小野が茶化すように言う。
「いま、俺にかける言葉はそれか?」
「うーん。他に思いつかないな……」
そういう小野に、三沢はようやく苦い顔をする。
「でも、事実とはいえ配慮が足らないよ」
「そういう、つもりで言ったんじゃない。剣護さんのやり方が、ひどいと思っただけだ」
「純粋な、幼心を利用して?」
小野の言葉に三沢は頷く。
「って、ことはさっきのは盾弥君や、安ちゃんに言ってたんじゃなくて、剣護さんにだったんだね。なら分かるけど……、やっぱり配慮が足らない」
「だが、今じゃないといけない。おそらく、剣護の記憶を呼び起こせば、盾弥は消滅する。そうなったら、遅い。その前に、大団円に終わらせなきゃいけない」
「こだわるね」
「それが、俺のアイデンティティーだと思ってる。いくら、楼子に否定されても、これは譲れない」
「じゃあ、頑張れ」
死亡したと伝えられる、当代最高の魔術師とよばれた、野崎剣護の息子、野崎盾弥と接触した調査団は、彼の口から彼の死亡が「怪しい」と言う事実を告げられる。
彼は、今もなお「失踪」した父を捜していた。
そんな、真摯な姿に心打たれた恵は、盾弥と共に彼の行方を捜すが、それに対し、三沢は「失踪」という事実に懐疑的だった。
事実、彼の死体は発見されて居らず、行方不明→死亡、という構図ではあったが、その間、家族、親友の類の誰にも会いに来ていないという事実。
三沢は、悪魔の証明であると思いながらも恵とは逆に「死亡」の方向から証明を行おうとする。
しかし、そんな側面から導き出された結論は、三沢にも、そして、息子の盾弥にも信じがたいものだった……
(1〜8話までのあらすじ?)
――
「以上の考察から、僕の導き出した結論は、『この世に存在しないのは、野崎健悟ではない』」
「どういう、事です?」
盾弥が訊ねる。
答えは分かっている。だが、それを、自らの口で言うのはあまりにも恐ろしく感じる。
「三沢……」
怪訝そうに、そして不快そうに恵が彼を見つめる。
「つまり、存在しないのね。野崎“盾弥”が」
「そういうこと」
非常に軽い調子で、三沢が言う。
盾弥はふるえが止まらなかった。自分が存在しない、と言う事実。
「Wd.野崎は、国家魔術師として、当時ある組織との調停を行っていた。反政府組織、梁山泊三十六士との。現行政府に対し、国家魔術制の是非にひどく武力的に意見するこの団体への対処を彼は命じられていた。その対処は、野崎に一任され、場合によっては血祭りに上げても不問、とされる作戦。彼はそんな政府の方針とは相容れず、粘り強く交渉を続けた。だが、その日、下手を打った。その内容は、僕はつかめなかったけど、安は知ってるんだろう?」
恵は頷く。
だから、あのとき三十六の一人、木戸が来たのだ。
「そして、追われる羽目になった。生命の危機を感じた彼は、世紀の大芝居を打つことにする。自身を、0歳の赤子に戻し、記憶に蓋をした。そして、三歳の時に「父にあった」という記憶を後で……五歳頃に発現するようにした」
「世界五分前仮説か」
安がつぶやく。
世界五分前仮説とは、哲学の思想。
世界は実は五分前に出来ている。自身に五分以上前の記憶がたとえあったとしても、それは五分以上前の記憶を持った状態で、その人間は世界と共に作られたかも知れない。
「ちょっと、ニュアンスは違うけど、そういうこと」
「じゃあ、盾弥君は、何なの?」
「野崎の作った幻影だよ。彼が野崎の隠れ蓑で野崎健悟=盾弥である以上、野崎盾弥はどう足掻いても存在しないのだし、ここまで育ってきた間の記憶はゴミくず同ぜ……」
三沢は、最後まで言葉を言うことはなかった。
唇を噛みしめる、安と、頬を真っ赤に腫らしながらも、表情一つ変えることのない三沢。
「最低」
安はそう、捨て台詞を吐くと盾弥の手を引いて部屋を出て行く。
「ああ、女の子泣かせた」
小野が茶化すように言う。
「いま、俺にかける言葉はそれか?」
「うーん。他に思いつかないな……」
そういう小野に、三沢はようやく苦い顔をする。
「でも、事実とはいえ配慮が足らないよ」
「そういう、つもりで言ったんじゃない。剣護さんのやり方が、ひどいと思っただけだ」
「純粋な、幼心を利用して?」
小野の言葉に三沢は頷く。
「って、ことはさっきのは盾弥君や、安ちゃんに言ってたんじゃなくて、剣護さんにだったんだね。なら分かるけど……、やっぱり配慮が足らない」
「だが、今じゃないといけない。おそらく、剣護の記憶を呼び起こせば、盾弥は消滅する。そうなったら、遅い。その前に、大団円に終わらせなきゃいけない」
「こだわるね」
「それが、俺のアイデンティティーだと思ってる。いくら、楼子に否定されても、これは譲れない」
「じゃあ、頑張れ」

